通常ありえない程の完熟を待った収穫で、テロワールの魅力を表現する最上の生産者
近隣のサンセールの陰に隠れて見落とされがちだが、11世紀の公文書にその名が登場し、フランスで最も古いワイン生産地のひとつに数えられるメヌトゥ・サロン。1987年、アルバーヌとベルトラン・マンシャンによって、この地にラ・トゥール・サン・マルタンが設立された。ドメーヌが所有する16haの畑は、メヌトゥ・サロンの中でも評価の高いモローグ村周辺に位置しており、サンセールに似たキンメリジャンのマール土壌が特徴的である。味わいもサンセールのようにクリスピーでミネラル豊富なワインとなるが、メヌトゥの土壌では、サンセールよりもエキゾチックなアロマが備わる。「より偉大なワインは、より素晴らしいブドウから生まれる」との信念から、畑仕事のほとんどが手作業で行われ、ブドウ栽培には有機農法を採用。除草剤が使われない、緑に覆われた畑では植物相が活性化し、土壌に安定がもたらされる。また、収穫も通常ありえないほどブドウが熟すまで待つなど、並はずれた労力を畑に注いでいる。
「ブドウの声を聞き、畑を観察し、ワインを味わい、15年たってようやくこの地のテロワールの偉大さを理解した」というベルトランが何より求めるのは、独特のテロワールを尊重し、それをワインの中に反映させることである。土壌由来のミネラル感と溌剌としたフレッシュさに溢れた彼らのソーヴィニョン・ブランは、目指すワインを体現しつつあるといえるだろう。また探求心溢れるマンシャン夫妻は、2004年からはヴァランセのル・クロー・ドロームというドメーヌでもワイン造りをスタート。ピラミッド型のシェーブルチーズで有名なヴァランセは、2004年にワインでもAOC昇格を果たしたフランスで唯一チーズとワイン両方でAOCを名乗れるアペラシオンである。上層が砂利に覆われた粘土とシレックス土壌の畑は、大雑把にいうとヴーヴレイとサンセールの間に位置しており、エレガントなソーヴィニョン・ブランが生まれる。メヌトゥとは全く違うテロワールを持つこの地に魅せられ、そのポテンシャルを引き出す彼らのワインは早くも2007年度版の『クラッスマン』に初掲載。「厳格な選果とワイン造りにより、ヴァランセの生産者の中で抜きんでた存在である」との評価を受けている。現在、ラ・トゥール・サン・マルタンとル・クロ・ドロームの2つのドメーヌは統合され、ドメーヌ・マンシャンというワイナリー名の下で2つのブランドとして展開しているが、従来通りブドウは別々の畑で栽培され、それぞれのセラーにて醸造・熟成が行われている。