ラプラス家はA.O.C.マディランとして初めてワインのボトリングと販売を行った生産者です。それ以前にこの地域で生産されていたワインは全て、下位カテゴリー(今日でいう IGP)のワ インとブレンドされていました。1930年代後半、ほとんどの生産者がトウモロコシの混作・複合型(ポリカルチャー)から単一栽培(モノカルチャー)に切り替えていく中、ラプラス家はマディランからワイン畑が消 え てしまわないよう、その流れに反して品質重視のワイン造りへと動き出しました。先々代フレデリック・ラプラス氏は、A.O.C.マディラン取得(1948年)にも尽力したマディラン のパイ オニア的存在です。 その後、1960年代に跡を継いだ息子ピエール氏が区画整理と醸造技術の改良を推し進め、現在に至るワイナリーの基礎を築きました。今日でもラプラス家はこの地域では先駆者として、高品質ワインの生産者として、そして何よりも、友好的で心の広いワイナリーとして非常に高く評価されています。
■ビオロジックに近いリュット・レゾネ(減農薬)を実践
完全に有機栽培をしないのは、ベト病が発生した場合、完全有機栽培では農薬を使うことが禁止されているため、病気に対応できなくなるからです。マディランの土地は非常に 暖かく湿 気も多いため、ベド病が発生する危険がとても高く、そのための準備が必要なのです。
■栽培についてのコンセプト
環境に配慮し、それぞれのテロワールの個性を尊重すること。栽培家によるブドウへの干渉は全て自然の法則に則り、化学的な手法には頼りません。除草剤、農薬、ボトリティ スに対す る抗生剤などはこれまでに一切使用たことがありません。(土壌のバランスを保つためにオーガニック肥料を使用することはあります。)
タナ種にはプロシアニジンが極めて多く含まれている !
フレンチ・パラドックス(脂肪分の多い食事をよく摂っているにもかかわらず、フランスでは心臓病になる率が低い)は、その内容が報告されて以来ずっとワイン愛飲家を惹き付けて き ました。これによる私の関心は、フランスワインが普遍的に心臓の健康維持の良いのか、それともフランスの一定の地域のものだけに限定されるのか、ということでした。第6章でも 書い ているように、私の調査は南西フランス・ジェール県のワインを調査する方向へと向かっていきました。本当にフレンチ・パラドックスが存在するとしたら、それはここにあるのです。 ジェール県に住む90歳以上の人数は国の平均の2倍にものぼります。もし赤ワインが体力を維持するものだとしたら、この地域のワインが何か特別なものを持っているのだと考え たのです 。私はどちらかというと疑い深い人物なので、この推測が本当だろうということを発見したのには本当にとても驚きでした。ワインというのは私が知っているものの中でも最もプロシア ニジンが豊かなものです。これらの説明には、この地域で広く育てられている葡萄であるタナという品種が関わっているようです。マディランを名乗るアペラシオンには40%以上タナ を 使用する必要があります。ブレンドに使用できる品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランと、地元品種のフェール、ピネンクです。タナは他の南西フランスのワインにも使 用されています。コート・ド・サンモン(60%以上タナ使用必須)、ベアルン、イルレギー、チュルサンと、構成要素としては少量ですがコート・デュ・ブリュロワで使用されています 。私はマディランとコート・ド・サンモンの赤ワインに注目しました。両方ともプロシアニジンが高く、ダイナミックで品質にこだわる生産者達が着実にそのアペラシオンの歴史を深め ていっているからです。
ザ・ワイン・ダイエット(2007年英ウィリアム・ハーヴェイ研究所実験医療学教授ロジャー・コーダー著)