ウィーン南東部に位置するカルヌントゥム地方にある22ヘクタールほどの小さな家族経営のワイナリー。オーナーのグラッスル家は村でも最も古い歴史をもつ家系です。エステイトの歴史は18世紀まで遡りますが、当時はブドウ以外にも様々な農作物を栽培していました。1998年、3代目で現在のオーナーであるフィリップ氏の代になってから改革が進み、ワイン造りに専念するために現在の醸造所を設立し、名称を「ワイングート・グラッスル」に改めました。以来、本格的な品質志向のワイン造りに励んでいます。
非常に良く管理された小さな畑には、現在のオーナーである若きフィリップ・グラッスル氏のまっすぐで素直な性格が良く現れています。ワイナリーでは赤ワインの生産が80%以上で、その約半分を地ブドウのツヴァイゲルト種が占めています。彼のワインは「親しみやすい」という言葉がぴったりですが、同時に洗練された国際レベルの高い品質を兼ね備えていることで知られます。
ドイツ圏の主要ワイン評価誌、ファルスタッフ(ドイツ)やヴィナリア(ブルガリア)では、4ツ星を獲得、また2007年にはファルスタッフの赤ワイン部門で賞を獲るなど、カルヌントゥムを代表するワイナリーとして注目を集めています。
ワイナリーのあるカルヌントゥム地方は、ウィーンの南東部、スロバキアと国境を接するワイン産地です。ここでは、ウィーンの森と丘陵地により大陸性気候の影響は弱まり、隣国ハンガリーのパノニア平原から来る熱波(パノニア気候)が吹き込むため、夏は非常に暑く乾燥します。逆に冬はマイナス20度にまで気温が下がり、平地部分ほど夏と冬の温度差が激しいのが特徴です。
温暖化の影響もあり、赤ワインの生産量が増える傾向にあるこの産地にあって、ワイングート・グラッスルでは赤ワインの栽培は90%近くまで高まっており、「赤ワインの造り手」として話題になっています。クオリティワインを造る若きフィリップ氏らの台頭により、カルヌントゥム地方は優れた赤ワインの産地としても、近年注目されています。