ヴィクトリア州に初めてブドウが植えられたのはイエリング・ステーション1838年のことでした。1850年代スイス人のポール・デ・カステラがイエリング・ステーションを引継ぎ、本格的なブドウ栽培とワイン醸造が始まり、ヤラ・ヴァレーはワイン産地としても観光地としても発展していきます。1889年イエリング・ステーションはパリ万国博覧会でグランプリを獲得、一躍世界中の注目を集めますが、20世紀に入るとフィロキセラの蔓延、経済不況、市場の嗜好の変化などが重なり、ヴィクトリアのような冷涼地でのブドウ栽培は急激に衰退し、19世紀と同じ牧畜地帯にもどります。
プレミアムワイン産地としてのヤラ・ヴァレーとイエリング・ステーションの復活
再びヤラ・ヴァレーにブドウ栽培が始まるのは1970年代になり、新しい文化的な需要の高まりとオーストラリアの他の産地での成功に押されてのことでした。何度と無く持ち主が変わった後にラスボーン・ファミリーがイエリング・ステーションを購入したのは1996年。栽培面積を増やすと共に、シャンパーニュのデュヴォー社と共同でスパークリング「ヤラバンク」の開発も始めました。以来、イエリング・ステーションは、地域の特性を表現する上質ワインを造るために家族経営を堅持すると共に、ワイン産地としての昔のような魅力にあふれるヤラ・ヴァレーを復活させるため、レストランや観光設備などの充実にも努めています。2004年にはロンドン・インターナショナル・ワイン・チャレンジにて「インターナショナル・ワイン・メーカー・オブ・ザ・イヤー」に輝き、また2006年にはオーストラリア・ツーリズムの最高アワード「ホール・オブ・フェイム」を獲得しました。