1年半程前の秋、僕はハーフマラソンに挑戦した。
42・195kmの半分だから約21・1kmの距離になる。
『諏訪湖ハーフマラソン』平坦なコースで記録が出やすい事、
諏訪湖を1周するコースで景色が良い事、そして走るのに快適な10月後半の
開催である事と条件に恵まれ約7000人のランナーが集まる人気の大会だ。
大勢のランナーが一斉にスタートするのだから、スタート位置によりタイムが
大きくかわってしまう。申し込み時に自己申告した予想タイムによってスタート
ゾーンが分けられている。ゼッケンもそれによって色分けされているのだ。
僕は大胆にも1時間30分で申告した。単純に計算すればフルマラソン3時間ペースだが、
恐らくハーフで1時間半を切る走力でもフルマラソンでは3時間では走れないだろうが。
フルマラソンを3時間以内で走りきるランナーを『サブスリー』と言い、一般のマラソン
愛好家の憧れの的であり、本格的陸上競技者を別にすれば上級ランナーと言える。
僕の将来的な目標もそこにある。目標は大きい方がいい。
スタートの位置は2番目に早いゾーンに当ったが、会場に着いたのが集合時間ぎりぎり
だったのでその中でも最後尾となってしまった。
スタートの合図と共に、ストップウォッチをONにする。とにかく大勢のランナーなので、
スタートしたと言っても歩く程にしか進めない。正式なスタート位置まで約50秒かかる。
前後左右に人がいて思うように走れない。少しイライラするが我慢するしかない。
ほぼジョキングペース(キロ6分~7分)で5分程走ると、ようやく人垣がばらける。
他のランナーに接触しないように左に右にまるで縫うようにスピードを上げる。
「何だか今日は身体が軽い」ストラドを広くして、弾むように走ることが出来る。
何人ものランナーを追い越していくのも気持ちがいい。僕を追い抜くランナーはほとんど
いない。目の前のランナーを次々に追い越していく。「爽快だ」しかし、これがこのレース
の敗因だと後で気付くこととなるのだが。